蒼い森 Caol Áit

A Filetta. Voix Corses (Editions Montparnasse, 2002)

AFiletta_DVD

 コルシカの多声合唱のグループ、ア・ヴィレッタ(ア・ヴィレーッタ、ア・フィレッタ)のDVD。本 DVD はリージョン2のPAL。

 音楽はこの上なく素晴らしいが、映像も美しい。コルシカの風景をおりまぜながら、ア・ヴィレッタの音楽を浮き彫りにしようとする。

 全体に非常に見ごたえ、聴きごたえがあるが、一つだけ挙げると、映像で見るジャン=クロード・アッカヴィヴァ (Jean-Claude Acquaviva) の歌うときの表情は独特のものである。U2 のボノのような尖鋭さを感じさせつつ、歌にどこまでも深く沈潜してゆき、グループを引っぱるエネルギーがあふれている。

 コルシカ語の歌にフランス語の字幕がつく曲もある。

 全41分。フィルムの構想はフラン・トゥナユ (Frank Tenaille) で、彼の詳細な解説インタヴューも収められている。彼の CD ブックから録ったポリフォニー用語集もある。

 ほかに、グループのディスコグラフィとボーナス2曲。

 収録曲――

  1. A Paghjella di l'Impiccati
  2. Paghjella
  3. Sub Tuum
  4. I Mulatteri d'Ulmettu
  5. Tra I Debbii Maiò
  6. Sumiglia
  7. A Sintenza
  8. Makharia
  9. L'Arditezza
  10. U Furore
  11. Kyrie
  12. Bonus tracks (audio only): 
  13. Là-bas le monts
  14. A l'orée de l'abîme

 参加アーティスト――

A Filetta (vo)

 ベスト・トラックは 'Makharia'。
 

トラック1 'A Paghjella di l'Impiccati' (別のDVDから)

 






谷川 俊太郎『二十億光年の孤独』(集英社文庫、2008) Two Billion Light-Years of Solitude


Tanikawa-20bYears

 これはものすごい磁力をもった詩集だ。

 「梅雨」における母音韻(assonance)のものすごさ。かと思えばアソナンスを切りアリタレーション(頭韻)かなにかがぶつけてある、その衝撃。その直後にはコンソナンス(子音韻)の重し。最後にアソナンスに帰還する。電子や陽子の加速実験というのがあるが、素粒子にあたるのが個々の音であり言葉であることが、この光速加速装置のような詩集から立ちのぼる匂いにより感ぜられる。

 これが谷川俊太郎の第一詩集(1952)の初文庫化とはおそれいる。1931年生れの詩人が十七歳終わりから十九歳半ばくらいに書いた詩作ノートから50篇の詩を集めてある。みずみずしいというより、言葉が放つ磁力や個々の音が帯びる電荷に、びりびりくる感じだ

 ちなみに、装幀は抜群だ。表紙をもったときの紙の手ざわり、うしろからめくったときの洋書のような雰囲気。そうそう、言いわすれていたが、巻末に英訳が附いている。この英訳はなかなかのものだ(訳者は William I. Elliott と川村和夫)。特に三好達治の序文の英訳がすごい。それから、なにより詩の配置のしかた。

 それだけではない。詩集のあとに谷川俊太郎本人による自註が附いている。「私はこのように詩をつくる」(詩「ネロ」の詩作過程について大変参考になる)を始めとする文章もいろいろ附いている。そのあとに山田馨による解説がある。これで終わりかと思えば、そのあとになんと自筆ノートのファクシミリ(写真複製)が附いている! そして、最後にこれでもかというように、先に述べた英訳までが附いているのだ。

 これは文庫というつつましやかな顔をしていながら、一歩中に入ると谷川俊太郎の世界がどこまでも広がる途方もない本だ。

 ひかえめに言っても、日本のある現代詩人の誕生をとらえた貴重な詩集だ。古い詩と新しい詩の分水嶺になるような詩集だ。

 「現代のお三時」はアメリカ現代詩の傑作、レトキの「悲しみ」 'Dolor' (1943)を想起させる秀抜な現代詩だ。それの約7年後くらいに書かれたものかと思うが、現代の生活にひそむ孤独とテクノロジーと時空を覆う寂しさといった感覚が、ひょっとするとレトキより見事にうたわれている。レトキ35歳、俊太郎少年18-19歳。米日の事情は違うが戦勝国にも敗戦国にもひとしく人間存在にからむ溜息が流れていたことが瞥見できる。この空気を描き出した詩が半世紀以上を経てなお新鮮というのは驚嘆に値する。



二十億光年の孤独 (集英社文庫)
谷川 俊太郎
集英社
2008-02-20

 電子書籍でなければならない場合が少なくとも3つある。

  1. 検索が必須の場合
  2. 付箋箇所を一覧したい場合
  3. 本を見失いたくない場合

検索が必須の場合

 これは本文の内容を徹底的に検索することが必須であるケース。たとえば、ある語句がどこに何回出てくるかを精密に調べる必要がある場合だ。

 以前はこの用途を満たす出版物としてコンコーダンス(総索引)しかなかった。しかし、コンコーダンスは高くつくし、対応している書籍が限られる。

 それに対し、電子書籍なら、ほぼ完全に検索しつくすことができる。このメリットは必要な人には限りなく大きい。

 詩の研究者ならコンコーダンスがなくては研究が始まらないが、電子書籍で手に入れさえすれば、その問題は解決する。

 聖書の場合、コンコーダンスはよく使われる。Strong のものはヘブライ語・ギリシア語の原語もすぐ分るので使いやすい(下)。

StrongCorcordance



付箋箇所を一覧したい場合

 これは簡単だ。ハイライトしたり注釈をつけたりしていけば、自動的に付箋箇所の一覧が生成される。

 Kindle の場合などはそれをウェブ上で見れば、多数の本の付箋箇所を一望できる。

本を見失いたくない場合

 これはつまらないことではない。紙冊体の書物はある限度を超えると一箇所に収蔵できない。必然的に複数箇所に所蔵することになる。

 書庫が複数になると、見つけにくくなる。笑い話のようだが、ある本を見つけるために何日も何ヶ月も費やすということが現実に発生する。これは全く生産的でない。

 電子書籍なら一発で探せる。

その他のメリット

 そのほか、文字を大きく読みやすくできる。多数の本を一度に持ち運べるなどのメリットもある。

 電子書籍のデメリットは電子書籍店が廃業すれば読めなくなることだ。これを防ぐためには、電子書籍に仕込まれたDRM(デジタル著作権管理)を解除するしかない。DRMフリーで配信されている電子書籍は多くない。





Ann Cleeves, Thin Air (Macmillan, 2014)

Cleeves-ThinAir


 イギリス最北の島といえばシェトランド諸島だ。スコットランドの北東にある。

 だが、そのシェトランド諸島の中でも最北に位置するのがアンスト島。本書はそのアンスト島を主たる舞台とするミステリ。書いたのは、シェトランド・シリーズで知られる英国の女性作家アン・クリーヴズ(Ann Cleeves, 1954年生まれ)。

 そのシェトランド・シリーズの第6作(2014)が本書、Thin Air だ。前作から加わった女性警部ウィロー・リーヴズが、シリーズの主人公ジミー・ペレス警部の上司として捜査を指揮する。

 ミステリの発端は、アンスト島で開かれる結婚祝賀パーティ。南のイングランドから若者3組がやってきて、そのうちの1組の結婚を祝う。ところが、そのパーティの夜、新婦付添いの女性役をつとめた友人女性が行方不明になる。捜索の結果、変死体で発見される。

 霧深い夜に行方が分からなくなり、捜索は困難をきわめたところから、このミステリ全体に濃霧のような謎がたちこめる。島の人間関係の複雑さと、そういう霧深い自然環境とが相まって、一種独特のミステリを作り上げる。犯人は外から来たイングランド人なのか、それとも現地の島民なのか。謎はページを追うごとに深まる。

 ペーパバックで400ページを超す長編だけれど、まったく飽きさせない、サスペンスあふれる物語は、これまでのクリーヴズ作品と変わらない。読み終わるのが惜しいくらいの気持ちに読んでいるとなるけれど、最後の1日の緊迫した展開には息もつかせぬ迫力がある。また、前作で仄めかされた、ペレス警部とリーヴズ警部のロマンティックな雰囲気は本作の隠し味になっている。また、本作では島の伝統文化、特に謎の伝説が大きな鍵を握るので、そうした面に関心ある人にはたまらないだろう。

 シェトランド・シリーズの全8作は次の通り。

  1. Raven Black (2006) 『大鴉の啼く冬』(創元推理文庫、2007)
  2. White Nights (2008) 『白夜に惑う夏』 (創元推理文庫、2009)
  3. Red Bones (2009) 『野兎を悼む春』 (創元推理文庫、2011)
  4. Blue Lightning (2010) 『青雷の光る秋』 (創元推理文庫、2013)
  5. Dead Water (2013) 『水の葬送』 (創元推理文庫、2015)
  6. Thin Air (2014) 『空の幻像』 (創元推理文庫、2018)
  7. Cold Earth (2016)
  8. Wild Fire (2018)

 原書で読む人のために少しメモ。邦訳版の冒頭に附いているような親切な登場人物表がない。記憶するか、自分で覚書を作るしかない。

 ぼくは電子書籍で読んだ。登場人物等を忘れた時はいつでも検索ですぐに探すことができる。Kindle などで読むと便利だ。



Thin Air (Shetland Island)
Ann Cleeves
Minotaur Books
2016-08-02






 アイルランド伝統音楽の巨人、シェーマス・エニスの珍しい動画。

SeamusEnnis

 1975年9月20日にアイルランドのTV番組 ‘An Fear Agus A Chuid Ceoil’ で放送されたもの。エニスはこのリール曲をコナマーラの歌い手 Colm Ó Caodháin から収集した。曲名は ‘Port na Gioboige’ (‘The Untidy Woman’s Tune’).

アイルランド語に関するメモ〕
 この曲名 'Port na Gioboige' の port はここで 'tune' 「曲」と訳されている。実際の演奏はリールだ。

 しかし、ダンス曲の分類としての 'port' というアイルランド語はふつうは「ジグ」を意味する。ここでの例のようにジグでなく、リールとなることがあるのは注意が必要だ。



Aran Islands: A Journey through Changing Times (2002)

AranIslands_VHS

 1960年代初頭のアラン島を撮影した貴重なカラー映像20分が初公開されたビデオ。私が入手した版は NTSC

 撮影したのは、アランセーターを世にひろめたことでも知られる新聞記者ポーリク・オシーハーィン Pádraig Ó Síocháin (1905-95)。

 それ以外に、撮影者の息子ルーァリー・オシーハーィン Ruairí Ó Síocháin が最近(おそらく2001年)同島で撮影した24分間の映像が収められている。その部分にラサリーナ・ニホニーラ Lasairfhíona Ní Chonaola の家を訪ねる場面が出てくる。

 そこでラサリーナが歌う場面が10秒ほど映っている。そこまでは2分間ほど他の映像にかぶさる形で歌声が聞こえる。これは未発表の歌で、無伴奏で歌われる。伝承歌ではなく、オリジナルだが、多くの人に聞かれ歌われれば伝承に入るのではないかと思わせるくらいすばらしい。

 もう一つ、既発表曲だが、無伴奏では初めての録音も収められている。この歌は後半はナレーションがかぶさる。

 それから、1960年代の映像中に、ラサリーナのレパートリーでもあるコーク県にまつわる歌が入っている。

 収録歌(ビデオテープでのおおよその位置とタイトル)――

  1. 02'30" -- Tearmann Chaomháin (lyrics: Dara Ó Conaola, air: Lasairfhíona Ní Chonaola)
  2. 16'50" -- An Raicín Álainn
  3. 27'10" -- Ar Bhruacha na Laoi (下記参照)

 ベスト・トラックは 'Tearmann Chaomháin'。

 参考までに下記に 'Ar Bhruacha na Laoi' の歌詞を掲げる。


Ar Bhruacha na Laoi

 

Nach brónach a bhí mise nuair a d'fhága mé an baile,
Agus dúirt mé slán leatsa a dhil Éirinn mo ghrá.
Gidh gur fhéach mé bheith súgach, á, ba deorach mo shúile,
'S mé a' scaradh óna chéile úd nach bhfeicfead go brách.

Ag scaradh go brách brách, le cnoic agus gleannta,
Agus cathair dheas Chorcaí nach bhfeicfead arís.
Ag scaradh go deo, deo leis na cairde ba dhílse,
Ó dhil-chairde m'óige ar bhruacha na Laoi.

'S nach minic a d'éiríodh grian lonrach na spéire
'S nach minic a bhuail sí faoi uiscí na dtonn.
Ó d'fhága mise an lá siúd mo mháithrin dhil Éireann,
Agus chuaigh mé thar sáile chun na tíre seo anonn.

Ach fós in mo chroí istigh tá cuimhne ar lasadh,
Ar maidin, iarnóin is le titim na hoíche,
Is i m'aisling arís bím i gcónaí mo sheasamh,
Ar charraig fhíor m'óige ar bhruacha na Laoi.

As sung in 'Aran Islands'.

 

(大意)
「リー川の堤にて」

[1] どれほど悲しかったことか、私がふるさとを離れ、
愛するアイルランドに別れを告げたとき、
私は陽気に見えただろうけれど、ああ、目には涙がたまっていた、
永遠に目にすることもないあなたから別れるのであったから。

[2] 永遠の、永遠の別れ、山や谷にへだてられ、
うつくしいまちコークを二度と見ることはない。
永遠の、永遠の別れ、無二の友らとも、
おお、若かりし頃リー川の堤で遊んだ友らとも。

[3] いくどもまぶしい太陽は昇ったではないか
いくども太陽は波間に沈んだではないか。
私の母なる誠実なアイルランドをあとにし、
この地へと海をこえてやって来たあの日以来。

[4] けれど、心のなかには今もきらめく想いでがある、
朝も、午後も、そして夜の帳がおりるときも、
まぶたにはいつも私の立っている姿が映っている
リー川の堤の、私が若かりし頃の本当の岩の上に。 

 

(註)
リー川はコーク市を流れる川。


この VHS テープは現在は入手困難と思われるが、DVD が存在するようである。CD World Ireland で販売している。 

AranIslands_DVD


次の説明があり、同一のものと思われる。

In the early 1960's, Pádraig Ó Síochain filmed life on the Aran Islands off the west coast of Ireland, just before electricity and television changed that way of life forever. 40 years later, Pádraig's son Ruairí brought this unique footage back to the islands for its first ever public showing. This is the story of that return journey featuring the early, original film', featuring songs by Lasairfhíona Ní Chonaola


萩野貞樹『舊漢字―書いて、覺えて、樂しめて』(文春新書、2007)

Kyu_Kanji

 読めても中々書けない舊漢字。「舊」そのものが書けない。この本は読めるようになろう、できれば書けるようになろう、とのねらい。

 書き順附き。本文は舊假名といふ具合。

 繩の筆順が分かる本は貴重ではないでせうか。

 この本はどこか「遊び心」があります。ゆとりが感じられます。そのことは、「はじめに」の次の文章からも明らかです。

いまさら旧漢字なんて、と思うかもしれませんが、今も世間では結構盛んに旧漢字が使われています。ことに固有名詞にはぞろぞろ出てきて、お相撲さんの醜名(しこな)などはほとんど旧漢字ですし、また街でも横濱珈琲だの慶應醫學部だのと旧漢字だらけです。これらが読めなくては安心して往来も歩けない、という感じがしませんか。

 とてもおもしろい本なのだが絶版。ぜひ Kindle 版を出してほしいものだが、本書の内容だと難しいかもしれない。というのも、漢字一字につき見開き2ページの体裁になっていて、右ページに字形、筆順、例文が挙げられる。左ページには活字体で新旧の字体・音訓、薀蓄(文字にまつわる話題)などが挙げられる。

 Kindle だとこういう見開きの構成の紙面が再現しにくい。もちろん、固定フォーマットの版にすればできるだろうけれど。できればリフローの方が読みやすい。ないものねだりか。




Festival Interceltique de Lorient (France Télévisions DVD, 2002)

InterceltiqueLorient

 フランス西部ブルターニュロリアンで毎年10日間にわたり開かれているインターケルティック・フェスティヴァル(フェスティヴァル・アンテルセルティク・ドゥ・ロリアン)のDVD。本 DVD はリージョン2の PAL でフォーマットは 1.33:1。

 ケルト諸語圏に属する地域の芸術家らが一同に集う催しだが、本 DVD はそのうち音楽部門の1999、2000、2001年の演唱のなかから17を選んでおさめたもの。

 参加地域は地元ブルターニュをはじめ、アイルランドスコットランドガリシアなどいろいろの地域がふくまれる。

 映像の質はどれも高いが、音質はものによる。いくつかのトラックはすばらしいが、いくつかはそれほどでもない。特に、ピックアップをもちいたフィドルやフルートの音がひどい場合があるが、これはミクシングや音響処理によるものか、音楽家の責任なのかは不明。マイクでひろった楽器の場合は概して良好。

 附録としてボンバルドやガイタなど特徴的な楽器の説明があるが、これはすばらしい。

 本編の17トラックに登場しないアーティストが短い演奏を聞かせる場合が多いが、一見の価値がある。ほかに、高名な Le Fest Noz をはじめ、パレードのもよう、 コルヌミューズやバガドのコンテスト風景なども少しおさめられている。

 収録曲――

  1. Alan Stivell: Back to Breizh
  2. Capercaillie: Tree
  3. Sharon Shannon: Bungee Jumpers
  4. Didier Squiban: Jackie's Tune
  5. Denez Prigent: E Trouz ar qêr
  6. Xose Manuel Budino: Alrededor
  7. Altan: Tá Mé Mo Shuí
  8. Luar na Lubre: Camariñas
  9. Gaelic Storm: Johnny Jump Up
  10. Alasdare Fraser: Skydance Reels
  11. Iron Horse: A Bhean Ladaich
  12. Brolum: Paul McGadden's Gig
  13. Karan Casey with Michael MacGoldrick: Ballad of Accounting
  14. Merzhin: L'Hacienda
  15. Les Trompettes du Mozambique: Breizhier
  16. Tri Yann: I Rim Bo Ro
  17. The Chieftains: Medley
 参加アーティスト―― 上記曲目参照
 ほかに、楽器紹介セクションで短く登場するアーティストとして、Kathryn Tickell (Northumbrian pipes), Natalie McMaster (fiddle), Liam O'Flynn (uillean pipes), Martyn Bennett (small pipes), Josick Allo (bombarde), William Morrison (bagpipes), An Triskell (Celtic harp), Carlos Nuñez (gaïta), Les frères Morvan (voice).

 ベスト・トラックはカラン・ケーシーの 'Ballad of Accounting'。このアレンジはカランのソロ第一作と同じだが、ユーワン・マッコールの原曲とはよほど雰囲気が異なる。ソロ・アルバムでのアレンジはジョン・ドイルとシェーマス・イーガンとカラン・ケーシーとによるが、リズムのアイディアはドイルではないか。ここでのマクゴールドリックのフルート(マイクでひろっている)もすさまじい。ライヴならではの迫力がある。

 一言書き加えるが、どうしたわけか、DVD のパッケージにも中身にもカラン・ケーシーの名前がクレジットされていないのは不手際というほかない。

 ほかに、トラック3、4、15、16は出色の演奏。さまざまの音楽スタイルが聞かれるが、全体を見終わると、ブルターニュ特有の空気がボンバルドやコルヌミューズやバガドの響きとともに強く印象にのこる。




人はみな、通り過ぎる風、たよりにはならない。
はかりにかけても その重さは息より軽い。
権力をむさぼらず、略奪に むなしい望みをかけず、
富がふえても心を奪われてはならない。

 10-11節(人も権力も富もたよりにならない)。

 註。10b:マソラ本文〈はかりにのぼっても、かれらを合わせて息より(軽い)〉

 『詩編』(あかし書房、1972)より。この本はコンパクトながら祈りに適した日本語訳をそなえ、各種の註釈が脚注で附き、繰返し読むのに向いている。

Psalms_AkashiShobo





John Renbourn, Rare Performances 1965-1995 (Vestapol 13032, 2003)

Renbourn-Rare

 イングランド屈指のギタリスト、2015年に惜しくも他界したジョン・レンボーン(1944-2015)の1965年から95年にわたる30年間の秘蔵映像から21曲を収めた DVD。

 インタビューなどは挿入されていず、ひたすら演奏と歌が収録されている。

 1995年の演奏のみ、やや精彩を欠くが、それ以外は総じて水準はかなり高く、ジョンやペンタングルのファンなら一見の価値がある。というより、買えるうちに買っておいたほうがいい。

 ジャッキーの歌は4曲で聴ける。

 バイオグラフィや曲目解説などは DVD に収録されている PDF ファイル(60頁の冊子に相当)にくわしい。その PDF にはいくつかの曲(「ロード・フランクリン」を含む)のタブ譜まで載っている。

 リージョン0、つまり日本の普通の DVD プレーヤーでそのまま再生可能。

 最初の4曲は白黒で、あとはカラー。全90分。

 収録曲――

  1. I Know My Rider (1965)
  2. Rehearsal (1965, w. Bert Jansch)
  3. Travelling Song (1968, w. Pentangle)
  4. Let No Man Steal Your Thyme (1968, w. Pentangle)
  5. In Time (1971, w. Pentangle)
  6. Blues In A (1974)
  7. Rosslyn (1974)
  8. Medley: Trotto/The English Dance (1977)
  9. Whitehouse Blues (1977)
  10. The Fair Flower Of Northumberland (1981, w. The John Renbourn Group)
  11. Medley: Pavane/Tourdion (1981, w. The John Renbourn Group)
  12. Candyman (1982, w. Stefan Grossman)
  13. Goodbye Porkpie Hat (1982, w. Stefan Grossman)
  14. 'Round Midnight (1988, w. Stefan Grossman)
  15. Medley: Abide With Me/Great Dreams From Heaven (1990)
  16. Sweet Potato (1992)
  17. Lord Franklin (1993)
  18. Little Niles (1993)
  19. Young Man Who Wouldn't Sow Corn (1995)
  20. Medley: The Lament For Owen Roe O'Neil & Mist Covered Mountains Of Home (1995)
  21. Medley: The Wedding/Cherry (1995)

     ベスト・トラックは 'Rosslyn'。この1974年当時、つまりジョン30歳の頃の演奏は神懸って見える。

    Rosslyn


    Rare Performances 1965-1995 [DVD] [Import]
    JOHN RENBOURN
    Quantum Leap
    2004-08-16