西宮北口駅の北西出口からすぐのカプリシカに行った。
行って分かったのが店名がアイルランド語であること。
capall uisce
「カプリシカ」とは聞いた発音をそのまま書いたものかもしれない。
店長談では(ネッシーのような)神話的な珍獣との説明だった。
が、アイルランドの神話伝説や詩歌に親しむ者には、この名からはある世界が広がる。
水の馬
は英語で water horse ともいう。沖から押寄せてくる波頭が、並び疾駆する馬と幻視される。ちょうど次ののような。
アイルランド随一の女性詩人 Nuala Ní Dhomhnaill の詩、'The Water Horse' と英訳される詩のことを想う。
だけど、ヌーァラは capall uisce でなく、'An tEach Uisce' と題する。
each uisce は神話の water-horse の意として FGB(アイルランド語の標準辞書)に出ている。
ヌーァラのこの詩には、少し人魚についての詩も想起させる、恐ろしいところもあるのだけれど、「神話的瞬間」とも呼ぶべきものが現代において析出する感がある。詩的言語が神話的空間への回路を開くような恐ろしくも美しい感覚が。
それを詩の登場人物たちが直観する瞬間がおもしろい。
「水の馬」に言い寄られた女性がはっと正体に気づき、逃げるように急ぎ帰宅する。しどろもどろの彼女の話から家人が何のことを言っているのか理解する瞬間だ。
is ar an bpointe boise gurb é an t-each uisce é.
Right on the spot [they knew] that it was the water horse.
まさにその瞬間[彼らは知った]、それが水馬だと。
「まさにその場で」ar an bpointe boise は「即座に」を表す慣用句だけれども、文字通りには「掌の処」。切迫感が伝わる。
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