小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集『小学館ランダムハウス英和大辞典小学館、1993

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 国語辞典であやまりが半永久的に保存されることは、高島俊男の『せがれの凋落』にくわしい。が、英和辞典でも同様のことがおきる。おなじような辞書の作り方をしているかぎり、この問題は永遠についてまわる。つまり、それまでの辞書の記述を参考にし、てなおししたり、ひきうつしたりして作っているかぎりは。この問題を解決するには、先行する記述の典拠を洗い直すしかない。

 ここでは、『ランダムハウス英和大辞典』をとりあげるが、ほかの辞書でも、残念ながら同様である。

 見出し語に 「O'」 というのがある。人名の姓でよく見かけることばだ。

 『ランダムハウス英和大辞典』は「(アイルランド系の姓において)…の息子[子孫]」と書く。

 「息子」というのは、ウソである。

 このことは、アイルランド語を解するひとは、みんな知っている。

 『ランダムハウス英和大辞典』は、このことばの語源として、「アイルランド語 ó 「子孫」(古期アイルランド語 au)を表す」と書く。

 「au」というのは、ウソである。

 このことは、古アイルランド語を解するひとは、みんな知っている。

 このような記載から浮かびあがるのは、今までの辞書かなにかの文献に書かれたあやまりが、チェックされることなく、後生大事にひきうつされつづけているということだ。だれも疑問にも思っていない。

 辞書を愛読するひとは多いとおもう。愛読するに足るだけの辞書があることも、また事実である。いつか、こんな読者にこたえる辞書が出てくることを期待したいが、どこかの根本を変えないかぎり、おそらく無理だろう。