青山繁晴『平成紀幻冬舎、2016

Aoyama-Heisei


読み終わった後もその本の世界がしっかりと残る書物がある。

この本はそういう書物だ。

小説だけれど、小説ではない。平成という元号がどうやって決まったかをかぎりなく真相に近くまで描く点ではノンフィクションだ。

もちろん、主人公を含む登場人物の名前は多くがフィクションだ。しかし、肝腎なところは本当のことが書かれていると強く思わせられる。

それは作者の筆力がただならぬせいでもあるだろう。だが、同時に、作者が経験したことの重みが誠実なまでにひびいているからだ。

この小説を読んでいる間は背筋が伸びる。主人公の生き方のあまりの潔さに打たれる。

主人公は通信社の記者、楠陽。小説のなかではほとんど昭和天皇の崩御の取材をしている。また元号も調べている。

記者仲間や官邸の人びと、学者たちが生き生きと描かれ、昭和が終わる頃の雰囲気が見事な散文に封じ込められている。ほろ苦いロマンスもある。

もっともっと作者の小説を読みたい。いまは議員をしておられるから無理だろうが時間ができたらぜひ書いていただきたい。


平成紀 (幻冬舎文庫)
青山 繁晴
幻冬舎
2016-08-05