Patrick S. Dinneen, Foclóir Gaedhilge agus Béarla (Irish-English Dictionary) (1904/1927)

DinneenDict

 ディニーン(Patrick S. Dinneen)のアイルランド語辞書といえば、多くの人の愛読書だ。たとえば、アイルランドの詩人ヌーァラ・ニゴーナルの。

 ディニーンの辞書の定義があまりにおもしろいので、それだけを tweet する アカウント もある。

 ディニーン(1860–1934)その人について少し。John Butler Yeats の描いた肖像画がよく知られる。

DinneenL

 恰好からわかる通り、神父さんだ。イエズス会に入り、司祭叙階されたのが1894年。その後、アイルランド語研究のためイエズス会をやめるが終生司祭であり続けた。

 神父さんの書くような辞書など抹香くさくておもしろいはずないんじゃ? との疑問は当然だが、これが読み出したらやめられないくらいおもしろい。〈辞書を読む〉という言葉はこの辞書のためにあるのではないかと思えるくらい。

 そうして愛読する人たちはみなハードカヴァで読む。1927年の第2版だ。ぼくはこれを2冊持っている。最初に手に入れたのが製本が気に入らなかったので、もう1冊買った。ともかく、愛読書だから、2冊あってもじゃまではない。

 さて、いま書くのは無料で公開されている版の話だ。


オンライン版(1927)

 ふつうのユーザがよく使っているのは次のオンライン版だろう。

 これはアルファベット(A, B, C, . . .)ごとにリンクがついていて、最小限の辞書引き機能がついたオンライン辞書だ。お世辞にも引きやすいとは言えないし、通読にも適さない。けれども、1927年の第2版の内容が入っている。

PDF版(1904)

 一方、1904年の初版がPDF化されて通読しやすい版がコーク大学の CELT にある。故 AlanMac an Bhaird 氏が CELT に寄贈したものだ。これは完全に文字認識のされたPDFだ。1904年版が大幅に拡充されたのが1927年版だけど、1904年の初版の序文には興味深いことが書いてあるので、たとえ1927年版を持っていても、それは読むに値する。

bé という単語を引くとおもしろい

 この辞書に bé という単語が載っている(上のオンライン版だと 'B' の項の23ページ)。

 PDF版(1904)で bé の項は次の通り。

be_Dinn


 オンライン版(1927)だと bé のあるあたりは次のような画面。初版に比べて第2版の拡充ぶりがよくわかる。紙の本にかなり近いけれども、実は bé の項は、下から2行目の 'BÉITH.' のところまでだ。その後は次の見出し語。

be_online

 この単語の説明は読んでみると、すこぶるおもしろい。ディニーンの辞書を通読していて改めて気づいた単語だ。

 こういう種類の出会いがあるから、この辞書はやめられない。

 実は上の画面をよく見ると、出典の記載が間違っている。BÉTHE BALBHA のところだ。'Coney's Irish-English Dictionary of 1849' Munst. などと書いてあるけれど、これは原典にあった出典略号 C. M. というのを C. と M. とでそれぞれ自動処理したための誤りだろう。本当はこの C. M. というのは詩の題名だ。有名な『真夜中の法廷』 Cúirt an Mheadhón-Oidhche という詩の286行目に出てくる。

ハードカヴァの入手法

 なお、この辞書の現行版のハードカヴァはアマゾンでは現時点では扱っていないようだ。アイルランドの書店、たとえば Litriocht からは入手できる。42ユーロ。