ノルウェーの三人組、ヴィンターモーネ の第1作。シンセサイザーなどを担当するメンバーのみが男性で、あとは女性。
このCDアルバムはいろんな意味で満足感がひろがる。まず、ジャケットを手にとると、感触がなんとも言えずいい。「冬の月」を象徴するのだろう円と三角。円のほうはガラスのようだ。三角のほうは中に煙を封じこめたような不思議な物体で、そこだけ材質の違う光沢を放っている。そういえば、Vintermane という文字も、淡い黄色の光沢を放つ。
プレーヤーに載せてかけると、ノルウェーらしい北欧の透明感と怜悧な感覚とが部屋一杯にひろがる。空気の感覚が変わるといってもいい。そのうちに、北欧独特の存在感のある女性ヴォーカル(アン)が始まり、一本の線が通る。この線はしっかりしており、容易には切れないような粘りがある。
そのうちにソプラノサックス(フレイディス)が始まる。このサックスはまたよく歌う。ヴォーカルに負けないくらい、よく歌う。バックで控えめに聞こえていたプロフェット・シンセサイザー(トルユス)はピアノの音色に変わるや、がぜん存在感を増す。かつてのジャズの名盤、アート・ランディとヤン・ガルバレクのコラボレーションをちょっと想起させる。
ジャズと言えば、このアルバムはジャズ喫茶でかけても、おそらくまったく違和感がない。ドラムズなどのゲストを含めて楽器奏者の感覚は完全にジャズのそれだ。
聴いていると、だんだんあったかくなってくる。最初の印象が怜悧だったのが嘘のようで、心の熱さが演奏に反映していることがリスナーにはよく分かってくる。この無段階の変化は非常にうれしい。冬から春にかかる頃に聞くと、感覚的にはぴったりだ。
参加アーティスト:
Anne Gravir Klykken (vo)
Frøydis Grorud (sax)