英語圏文化で頭韻が果たした役割はいろんなところに見られるけれど、タイトルなんかは、そのもっとも典型的な例でしょう。

 たとえば、シェークスピアの喜劇『恋の骨折り損』のタイトルを見てください。

Love's Labour's Lost

 どうです。おどろきの L 三連発の頭韻です。シェークスピアは当時、売れっ子の劇作家だったと思いますが、その彼でもこれだけタイトルには配慮していたんですね。 

LLL
シェークスピア『恋の骨折り損』1598年版

 あるいはジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』(1813)のタイトルは次のようになっています。

Pride and P
rejudice

 みごとな P の頭韻ですね。

 近年、映画化が話題になったスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』(1925)はこうなっています。

The Great Gatsby

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 文学作品だけじゃありません。映画のタイトルにも頭韻はずいぶん使われています。どういったものがあるでしょうか。

頭韻を用いた映画タイトル

 バーブラ・ストライサンドとロバート・レッドフォードが主演した「追憶」(1973)は原題がこうです。

The Way WWere

 これもおどろきの W 三連発の頭韻です。探せば四連発の頭韻なんていうのもあるかもしれません。

 何度も映画化されている「キングコング」(1933, 1976, 2005)はこうです。

King Kong

 シンプルですが、この K の頭韻は強力なひびきがあります。

 ブルース・リーが主演した香港映画「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972)は英語圏の観客を大いに意識したタイトルです。

Fist of Fury

 アメリカでのタイトル 'The Chinese Connection' よりも、こちらの F の頭韻のタイトルの方がパンチがあるように感じます。チャイナタウンもあるアメリカでは 'Chinese' がある方が売れそうだと判断したのでしょうか。視覚的には C の連続で目を惹きますが、このタイトルは、音としては N の頭韻です。

 大学紛争の青春を描いた「いちご白書」(1970)は日本での題のつけ方が秀逸でしたが、原題は

The Strawberry Statement

と、実はそのままに近いものでした。これは /st/ の頭韻です(頭韻が子音の場合、連続する子音でも成立します)。

 再放送が日本で待望されている子供番組「セサミストリート」はこうです。

Sesame Street

 これは S の頭韻です。

 こうして見てくると、いずれも子音による頭韻でした(F, G, K, L, P, S, W)。調べたかぎりでは、母音による頭韻のタイトルは中々ないようです。

 映画のタイトルで見つかった数少ない母音による頭韻の例は次の通りです。

Aliens in the Attic (2009) 
Almost an Angel (1990) 
Amos and Andrew (1993)