誰もが知るヒット曲の隠された歴史を書きます。これは「英詩のすすめ」という記事の一部です。

 英詩って食べられるのでしょうか。いいえ。
 英詩って入社試験に出るのでしょうか。いいえ。
 英詩って知っていたらカッコいいのでしょうか。(たぶん)いいえ。

 ではなぜ英詩をすすめるのか——それが問題です。簡単な答えは芸術にしては

持ち運べるから 

 持ち運べるのはどうして? 憶えられるからです。
 どうして憶えられるの? 憶えられるようなリズムと韻でできているから。
 リズムと韻てなに? 「英詩が読めるようになるマガジン」をお読みください。

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 このあとは、せっかく本記事を覗いてくださったあなたに、セブンのCMでおなじみの「あの歌」の真相についてお話ししましょう。こんな歌です。

Jstewart
原作者 John Stewart (1939 - 2008) 

 

'Daydream Believer' の歌詞の変遷 

 この歌は故忌野清志郎さんが日本語の詞をのせた「デイ・ドリーム・ビリーバー」というアメリカの曲です。「ずっと夢を見て 幸せだったな 僕は Day Dream Believer そんで彼女はクイーン」の歌詞が耳に残ります。

 直接の元歌はアメリカのアイドル・グループ、ザ・モンキーズの1967年の大ヒット曲 'Daydream Believer' です。

 名曲です。彼らのために曲を提供したのはフォーク・シンガーのジョン・スチュアートでした。ところが、レコード会社から条件がつきました。歌詞を一箇所変えたいと——アイドルグループにふさわしくない歌詞だとお偉方は考えたのです。それは2番の 'funky' です。〈ぼくの実像が「イカれた」男だときみは知った〉——まるで、自らを揶揄するような歌詞です。レコード会社はここを 'happy' に変えないかぎり、レコーディングはなしだと言ってきました。

 ジョンは、冗談じゃない、歌の意味がまるで変わってしまうと抗議しましたが、結局、受入れました。その結果、新婚当時の夢から覚め、お互いに幻滅した「ほろ苦い」歌だったのが、バラ色の幸せな生活が続いている夫婦の歌に書き換えられたのです。しかし、この、作者にとっての「挫折」が、その後の彼の人生を支えることになりました。全世界でヒットすることになったからです。

 皮肉なものです。アーティストの人生のふしぎを思います。そう思いながら、元の歌詞で唄うジョン・スチュアートの歌を聞くと、やっぱり、この歌はこれが本来の姿だと、しみじみと感じられます。そのしみじみとした感慨は、歌詞をじっくり読むことで得られます。この詞はすばらしい詩です。特に「ほろ苦さ」感が満点なのが、最後に近づくにしたがって、コーラスの歌詞の 'a daydream believer' が 'the whole lonesome picker', 'the whole surfer drummer', 'old Nashville Carter' と次々に変わってゆき、そして最後に 'a daydream deceiver / And a old closet queen' と閉じられるところです。

Daydream Believer by John Stewart

If I could hide 'neath the wings of the bluebird as she sings
The six o'clock alarm would never ring
But it rings and I rise, I rub the sleep out of my eyes
My shavin' razor's old and it stinks

But cheer up sleepy Jean
Oh, what can it mean
To a daydream believer
And a homecoming queen

You once thought of me as a white knight on his steed
But now you know how funky I can be
And our good times start and end without dollar one to spend
But how much baby do we really need

So cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To a daydream believer
And a homecoming queen

Cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To a daydream believer
And a homecoming queen

Cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To the whole lonesome picker
And a homecoming queen

Cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To the whole surfer drummer
And a homecoming queen

And cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To old Nashville CarterAnd his homecoming queen

Cheer up, sleepy Jean
Oh, what can it mean
To a daydream deceiver
And a old closet queen